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カテゴリー システム開発November 12, 2007

SIer2.0とレバレッジド・プログラマー ID:1194812865 このエントリーを含むはてなブックマーク



江島健太郎氏のエントリ「ニッポンIT業界絶望論」が気持ちいいぐらい私の思いを代弁してくれています。

ニッポンIT業界絶望論
http://japan.cnet.com/blog/kenn/2007/11/09/entry_25001425/

曰く、
受託開発の世界のどこにイノベーションがあるのだろう?

そういう疑問が堰を切ったようにあふれてきて、そして答えはどこにもなかった。文字通り、どこにもなかった。

それに対して反論というかSIer応援エールみたいなものも挙がっているわけですが…。

IT業界進化論:絶望する前に"SIer 2.0"を目指せ
http://japan.cnet.com/blog/0040/today/2007/11/10/entry_25001452/

具体的なベンダー名を挙げることは控えますが、このように受託開発を取っ掛かりとして案件を拡張したり、自らニーズを作り出す、場合によっては新サービスにまで結びつけるということをしています。

この反論、記事の内容自体は理解できるし、実際そのような動きになっていると聞きます。
特に外資系のコンサル攻勢が凄いらしく、今は日本側のSIerが必死で対応している所なんじゃないかと思っているのですが(公共事業すらシェアを奪われつつあるという話も)。

しかし、それはさておき、元記事の「イノベーション」の意味を、この反論では敢えて、なのか分かってないのか知りませんが、理解していないように思います。この反論は「受託開発だって、言われた事をそのままやるだけじゃなくて、自ら提案するようになっているんだよ」という事なのだと思いますが、江島氏の話はそういう点にはありません。

江島氏のエントリの最も肝の部分はここです。

情報という財の新しさは、ほぼ限界費用ゼロで劣化なく無限に複製できるということだ。
(中略)…参入に巨額の資本を必要としない情報産業では超優秀な技術者のアテンション(集中力)だけが稀少資源で、それ以外の何物もない。その資源を使ってどれだけレバレッジの効く情報財を生み出せるかが唯一無二の戦略であるはずだ。

であるのに、受託開発の世界には、そういったエキサイティングな革命の歴史とはどこにも接点がない。

生産された財は、最も低水準なサービス財と同様、たった一人の顧客に届けられる。以上おわり。

これこそまさに私が以前から思ってきたことです。

例えるなら、ここに名工と呼ばれる椅子職人が居たとします。
彼の作る椅子はまさに神の領域で、誰もがそれを欲しがります。
しかしその椅子は彼にしか作ることができず、彼が書いた設計図通りに作っても、同じものになりません。

その椅子一つ作るのに一ヶ月かかるとすると、彼は40年かかってもたった12×40=480個、480人しか満足させることができないのです(まぁ、その希少性こそが満足という職人もいるでしょうが)。それが天才椅子職人の限界です。

しかし、プログラマーは違うのです。
天才プログラマーが作ったソフトウェアは、コストほぼゼロで無限にコピーできます。そしてネットの力により、配信コストもほぼゼロです。
彼一人で、世界中の顧客を満足させることができるのです。
これが「レバレッジ(てこ)」ということです。

受託開発では、天才職人の才能を特定の顧客の為だけに消費させるという無駄を犯し続けてきました。

ネットが今、世界を変えるとまで言われている最大の理由は「情報はコピーしても減らない」という点に尽きます。まさにこれこそが、物理的な「複製コスト」という制約に縛られてきたこれまでの世の中と決定的に違う点です。それを生かさずして、何がイノベーションでしょうか。

プログラマーの才能に無限大のレバレッジをかけて世界中に届ける−−この発想は、特定の顧客の要望を聞いてオーダーメイドなシステムを作っているだけの開発者には永久に生まれません。人月で社員を食わす事に必死な人々が考えるのは「どうやって個人の力に依存しないようにするか」だけであり、個人の力を最大限に引き出すなどという発想とは真逆です。

今の日本の受託開発は「毎回特注品を作るにも関わらず、それを製造業的に行おうとしている」という根本的な矛盾を抱えています。出来上がったものはどこかで見たことがあるような模倣ばかりで、そのくせ製造業のような均質な品質も保たれていません。

「SIer2.0」というなら、せめてまずこの矛盾を解決してからにして欲しいものです。

話が少しずれましたが、元の江島氏のエントリに戻って。

ま、そんなわけで、世の中が目まぐるしく動いているのに自分は・・・という焦りを覚えている心ある技術者は、全力で受託開発の会社から逃げ出す準備を整えたほうがいい。とても残念なことだけど、そこには未来は絶対にないよ、とハッキリと言っておくのが、ぼくにとっての精一杯の誠意だ。

敢えて私からも言います。

もしあなたが、「いや、逃げ出す前に、僕がこの(受託開発)業界を変えて見せる!私がSIer2.0を実現してみせる!」という意気込みを持っているとしたら、それは嬉しいことです。

でも、それはやめておけ。
絶対に変わらないから。

巨木というのは幹の中心から腐っていき、倒れる寸前まで威風堂々と見えるそうですよ。

【追記】
似たような点を指摘している記事を発見しました。
こういう視点がもっと日本のプログラマーに増えるといいなぁ。

レバレッジの効く仕事をする
http://www.arclamp.jp/blog/archives/leveraged_work.html
— posted by chikura @ 05:27AM | LinkMe | Comment(2) | TrackBack(0)

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