「だって、SNSって、mixiでしょ? モバゲーでしょ? 所詮、パソコン通信のリプレースでしょ? もうブームは下り坂なんじゃない?」
しかし、SNSこそが本命であると言える動きが、ここ暫くで続いている。日本からは見えにくい所で。
(いや、「そんなの当たり前じゃん」という事ならいいんだけど、どうも、あまり日本では大きく騒がれていないように思うので…)
敏感な人はもっと以前から気づいていただろうが、私が気づいた最初の兆候はfacebookによるプラットフォームのオープン化である。
- Facebook、プラットフォームを「オープン」に
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0705/28/news014.html
簡単に言うと、facebookのサイト上にサードパーティーが独自のウィジェット(アプリケーション)を仕込める仕組みをオープンにしたのだ。IFRAMEなどを使って埋め込む、というような単純なものではなく、facebookが提供する様々な機能とデータをAPI経由で利用できるというものである。
例えば、写真を共有する為のウィジェット、友達のプロフィール上に落書きができる「Graffiti」、友達同士で花を贈りあい、それを庭に植えていくことができる「My Garden」などなど、様々なユニークがウィジェット・アプリケーションが、日々世界中のデベロッパーによって作成され、利用されている。
それ以外にもPCのデスクトップアプリとしてfacebookと連携するアプリケーションなど、プラットフォームがオープンだからこそ可能になったと言えるだろう。
しかもこのfacebook APIは、商用利用も可能なのだ。
実際のところfacebookアプリケーションはほとんどが無料だが、ちょっと高度な機能を使おうとすると、別途ユーザー登録が必要だったりするものも少なくない。つまり、魅力的なアプリケーションを提供することで、自社の有料サービスなどへと誘導したりすることが、facebookの全ユーザーに対して行えるのだ。
もちろん、完全に趣味で提供されているアプリケーションも多い。facebook公式でないアプリはちゃんと判別可能なので、慎重な人は公式アプリだけ使ってもOKだろう。
面白いのは、facebookを使っていると、friend登録したユーザーが導入したアプリケーションが全friendに通知される点だ。「○○さんが、今日、My Gardenアプリケーションを導入しましたよ」という感じで。また、そのユーザーのプロフィールやフィードに表示されるアプリケーションをクリックすると(クリックしたくなるようになっている)、すぐにそのアプリケーションのインストール画面に移るようになっている。アプリケーションは大抵、友達同士で何かをやりとりして楽しむものが多い為、この仕組みによってどんどんアプリ導入者が増えるような仕組みになっている。
これはまさにビジネスチャンスだ。
これでもまだ、SNSの何が重要なのかよく分からない人もいるかもしれないので、もう少し分かりやすく説明してみよう。
「あなたは既に、世界的な大規模SNSに加入している」と言ったら、驚くだろうか?
それはあなたのデスクトップだ。ユーザーIDとパスワードを使ってログインする。あなたのデスクトップはインターネットにつながっており、メールにはマイミクならぬ「ユーザー帳」があり、そのユーザー達と日々やりとりしている。また、右端にはskypeやMSNメッセンジャーが鎮座し、あなたが更新した情報は「友達リスト」に随時届けられる。ネットゲームを立ち上げると、ネットの向こうの友達と繋がる…。
これは、SNSではないのか?
逆の視点から言い換えれば、APIがオープンになっているSNSは、「次の時代のデスクトップ」と言えるのだ。
「旧時代のデスクトップの覇者」たるMicrosoftは、先立ってfacebookの1.6%の株を2億4000万ドルで買収する動きに出た。
- Facebook、Microsoftの金を持って走る
http://jp.techcrunch.com/archives/facebook-takes-the-microsoft-money-and-runs/
- FacebookがGoogleではなくMSを選んだ理由
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/26/news050.html
もちろんMicrosoftは以前からfacebookに興味を持っていた。
- Microsoft幹部がFacebookに熱心なわけ。ビル・ゲイツはHotOrNotにも
http://jp.techcrunch.com/archives/microsoft-execs-active-on-facebook-plus-is-bill-g-hot-or-not/
上記記事によれば、Microsoftからは当時で既に13,000人以上のプロフィールが登録されていたらしい。それは従業員だけでなく役員(つまりBill Gatesも含めて)もだ。対してGoogleやYahooは社員だけで役員は参加しておらず、登録数も5,000人、3,000人と比較的少ない。
ちなみに2007年11月現在では、Microsoft社員は21,114人に膨れ上がっている。Googleは6,831人で、さほど増えていない。
え?なんでそれが分かるのかって?
facebookでは、プロフィールに自分の所属する会社名や大学名を入力すると、簡単にその「Network」に所属するすることができるようになる(もちろん会社のe-mailでの身元確認は必要だが)。だから、MicrosoftのNetworkを見れば、所属者数が一目で分かるのだ。
このように、facebookでは徹底的に「人と人の関係」をデータ化しようとする。趣味の欄にカンマ区切りで「programming, anime, manga」などと書けば、それらがタグとして認識され、同じタグで別の人と自動的に繋がる。
言ってみればプロフィールをタグで表しているようなものだ。もちろん、mixiのようなコミュニティ(Group)を作ることもできる。
そしてこれらの膨大な情報を使って様々なアプリケーションを構築できるのである。ちなみに現在のfacebookアプリケーションの総数は、7,442個にも上っている。
それにしても、このような事はGoogleがやりたがっていた事なのではないだろうか?
Googleは、独自のSNS「Orkut」を持っているが、これはポルトガル語圏SNSとしての地味な成功しか収めなかった(有り体に言えば、「失敗した」)。
「おそらくGoogleは、Orkutをfacebookのようにオープンなプラットフォームへとテコ入れするか、もしくはまったく新しいSNSをリリースするのだろう」
「iGoogleを、SNS化する方向に持って行きたいのかもしれないが、そもそもそういう目的で使われている訳ではないので、簡単ではないだろうなぁ。」
と思っていたのだが、つい、先日、予想もしていなかった「OpenSocial」を引っさげて、GoogleがSNSの表舞台に登場したのは皆さんも記憶に新しいことだろう。
- Google王手か? MySpace、Bebo、SixApartがGoogle OpenSocialに参加(確認ずみ)
http://jp.techcrunch.com/archives/confirmed-myspace-to-join-google-opensocial/
OpenSocialは、簡単に言えば、facebookのアプリケーションのような仕組みを共通仕様にしたものだ。この仕様に沿えば、そのアプリケーションを様々なSNSへポータブルに持っていく事ができるようになるらしい。もちろんその為には各SNS運営側の対応が必要なのだが、既にMySpaceやSixApartなどが参加表明している。
つまりGoogleは、自分でSNSを作るのはやめて、世界中のSNSに「facebookよりオープン」となることを提案したわけだ。
ちなみにfacebookは参加表明はおろか、Googleからの連絡さえ受けていないらしい。
facebookにとっては難しい選択になるだろう。
facebookがOpenSocialに対応しなければ、当面の間、Socialアプリケーション・デベロッパーは、OpenSocialと、facebookの独自マークアップ言語「FBML」の両方で開発を行う事になるだろうが、作りやすさから言えば、HTMLとJavaScriptの知識の延長で開発できるOpenSocialの方が上だと思われる為、そちらの方が「より幅広い」アプリケーションを獲得する事になる可能性が高い。
そうなってくると、他SNSへの流出が懸念されるかもしれず、だったら最初からOpenSocialに対応しておけば、それらの幅広いアプリケーション群を取り込む事ができる。
しかし、そうすると今度はデベロッパーがFBML対応アプリを作らなくなる為、他SNSとの違いを出しづらくなってくる、という寸法だ。
まさにGoogleの「王手」である。
facebookとしては、おそらく「OpenSocialには対応するが、独自APIにはFBMLからしかアクセスできない」とするか、「OpenSocialに対応し、独自APIで勝負する」のどちらかになるのではないかと思う。もちろん後者こそがGoogleの望む姿だろう。
しかし、OpenSocialはセキュリティ関連で指摘が相次いでおり、
- OpenSocialアプリ初ハック、45分で発生
http://jp.techcrunch.com/archives/first-opensocial-application-hacked-within-45-minutes/
- OpenSocial、再度ハックされる
http://jp.techcrunch.com/archives/first-opensocial-application-hacked-within-45-minutes/
しかもfacebook自身は現在、新しい広告システムの導入に集中している為、微妙に出足は遅れる事になりそうな気もする。
Facebook、新しい広告システム「Facebook Ads」立ち上げ
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/07/news014.html
以上、これほどまでに熱いSNS界隈だが、日本では呆れ返るほど停滞している。
せめて日本のウェブ・デベロッパー達ぐらいは、facebookやOpenSocial等の情報に目を光らせ、facebookかそのライバルが日本上陸する日に備えて準備しておいた方が良いのかもしれない。
【追記】すいません、mixiもOpenSocialに対応表明していたんですね!すっかり見落としていました…。orz(コメント参照。まさとしさん、ありがとうございます。あとmixiごめん!)これは素晴らしい。しかし、これは面白いことになりそうです。
【追記2】それにしてもmixiがOpenSocialに対応表明していたとは…あまりにも予想外でびっくりです。どこまでmixiが本気なのかがいまいち分かりませんが・・・。ぶっちゃけ「当社のサービスの方向性と「OpenSocial」の理念が合致している」って言われても、ピンとこない・・・。
【追記3】mixiがOpenSocial対応する話が徐々に脳みそに浸透してきました…w。遅いって? いやしかしこれは凄いことですよ。なんでみんな落ち着いていられるんだ??w うーわー、何作ろうかなー。SNSが「次世代デスクトップ化」するビジョンが、めちゃめちゃ現実味を帯びて参りました。










> 自前で動画共有などへも手を広げているところを見ると、
> 全部自分で囲い込むつもりに見える。
↓囲い込みしないよね?
『mixi』、SNS情報参照の共通規格「OpenSocial」への賛同を表明
http://mixi.co.jp/press/press_071102.html
chikuraくんの記事を誤読していたらスマンす。 — まさとし @ 05:39PM 2007-11-07
mixiを侮る先入観があったのだろうなぁ・・。ごめん、mixi。
さっそく記事に追加します。ありがとうございます。m(__)m — chikura @ 05:59PM 2007-11-07
最近、仕事の周辺で、ユーザの「ファーストタッチを取る」議論をしてます。ユーザが最初に接触する「関所」を握ってしまうとビジネス的な旨味は計り知れず。
「関所」を巡って、かつてはポータルサイトの覇権争いがあり(そしてY!の一人勝ち)、検索エンジンの争いがあり(
そしてGに持っていかれ)、ツールバーとかデスクトップツールとかいろいろあったのですが、「SNSがデスクトップになる」視点はかなり刺激的ですね。SNSをどう定義するか?にもよると思うけど、mixiの場合、ユーザとの関わりはY!なんかに比べると強い絆でつながりそうですね。今のところmixiは、まだまだ(ビジネス的には)「プラットフォーム」にはなりきれていないと見ていますが、件の「OpenSocial」と絡めて、本格的にユーザとの関わりを深めていくと、ネット上の情報の流れがドラスティックに変わるかも。 — tamtam @ 12:12AM 2007-11-08
コメントありがとうございます。
私も「ファーストタッチ」取りたいです。笑
先日Facebook Adsも公開されましたが、OpenSocialによってSNSがプラットフォーム化すれば、「広告」という概念そのものが変わってしまうかもしれませんね。バイラル用のSocialアプリの需要が一挙に高まりそうな予感がします。「ウェブサービスを公開する」=「OpenSocialアプリを一緒に提供する」という事にもなりそうな。
なんかワクワクしてきますね。 — chikura @ 11:45AM 2007-11-08